国が違えば、浸透している慣習や文化も異なる。
相互理解のために、価値観の違いを受け入れる姿勢は大切だと、散々学校で言われてきましたが、どうしても日本人の感覚からすると受け入れがたい文化や慣習も存在するのも事実です。
筆者は中学・高校時代にオーストラリアとカナダでホームステイを経験し、大学では留学生とシェアハウスをしたり留学をするなど、異文化とつながる機会はそれなりにありました。
その中でも、どうしても受け入れられない、というか理解できない慣習がありました。
それが今回紹介する「フィリピンタイム」という概念です。
フィリピンタイムとは?
「フィリピン人は約束の時間に必ず遅れてくる。」
そんなことをよく外国人は「Filipino time(フィリピノタイム)」として揶揄します。日本だと「フィリピンタイム」なんて言っている人が多いですね。
フィリピンタイムは、「定められた時刻よりも遅れてくる」ことを指します。
「フィリピン人の友達と18時に待ち合わせしたのに、19時すぎにやってきたんだけど…。」(しかも連絡取れない)
例えば、「6時に待合せ」をしたとすると、フィリピン人からすれば「7時くらいにつけばいいってことでしょ」 って感覚。
実際に、フィリピン人の友達と待合せをするとだいたい1時間くらい遅れてくる。しかも連絡もなしに。
理由を聞くとだいたい、「渋滞がひどくてね」が常套句。
フィリピンでは渋滞なんて日常茶飯事なので、事前に予測が出来るものなんですが、彼らにとっては都合の良い言い訳なのです。
実際は、ほとんど彼らの怠惰による遅刻なんですけどね。
フィリピンで現地の人と待ち合わせをした事がある方なら、上記のような経験をした事があるのではないでしょうか。
筆者は大学在学中にフィリピンに7回ほど渡航し、合計で1年半ほど滞在していましたが、ほぼ毎回と言って良いほどフィリピン人は待ち合わせの時間に遅れてきます。
10分や20分ではなく、30~60分ほど遅れてくる事がほとんど。その理由は決まって「heavy traffic(渋滞)」でした。
確かにフィリピンは週末や雨の日は渋滞が発生しやすい。ただ、渋滞が日常茶飯事のフィリピンではそんな事は事前に予想ができるわけで、やはり時間を守る意識が日本人の感覚からかけ離れていると筆者もこの身で感じました。
仕事の場でも時間にはルーズ
筆者は2年ほどフィリピンに滞在していたので、現地に住んでいる日本人やフィリピン人とよく話す機会がありました。
そこで全員口を揃えているのが、「フィリピン人は時間にルーズすぎる」ということ。
確かにマイペースな国民性ではありますが、仕事に遅刻してきたり、打ち合わせをすっぽかしてくるなんてことがよくあるんだそう。日本では考えられないことですよね。
もちろん全員がそうではないですが、確かに筆者も心あたりがあります。
また、国の大統領までがこのフィリピンタイムに侵されているという話もあります。
かつてのフィリピン大統領は、ニューヨークでの式典に予定より2時間遅れて到着し、観衆を失望させたというストーリーがあります。
その時の大統領の言い訳が、「heavy traffic(渋滞だった)」とのこと。しかし大統領の警備曰く、渋滞などなくただの大統領の怠惰のせいだった と語っていたそう。
フィリピンタイムは国のお偉いまで浸透していたのでしょうか。
フィリピンタイムの起源と歴史
フィリピンタイムはフィリピンの文化としてかなり深く根付いている印象があります。
フィリピン人も「自分たちの悪い文化だよね〜はは。」と、フィリピンタイムを慣習として受け入れているようです。(馬鹿にしてはいけないですけどね)
フィリピンタイムの歴史は長く、その起源はフィリピンのスペイン統治時代まで遡ります。
当時のスペインのお偉い様は、「自らの威厳を示すため」に常に時間よりも遅れてきたそう。
それを見ていたフィリピン人も、遅れて到着することに違和感を感じることがなくなったのだとか。これが現在有力な説のようですが、暖かい気候が気分を怠惰にさせるという説も唱えられています。
正直起源とか歴史とかどうでも良いけどね。
フィリピン人と待ち合わせをする際に気をつけるべき事
初めてフィリピンにいく外国人は、このフィリピン人ののんびりとした時間感覚に最初は驚くことが多い。
そして、このフィリピンタイムがよくフィリピン人との衝突のタネになります。
当たり前ですよね。待合せに毎回1時間も遅れてこられたらガンジーでも飛び蹴りします。
この忌々しいフィリピンタイムへの対処法ですが、正直これしかありません。
事前に何度も時間通りに念押しする。これに尽きます。
「待合せは18時だよ!あ、フィリピンタイムじゃなくてJapanese timeね!」
ひたすら念押し。それでも遅れてくるのがフィリピンタイムのすごいところなんだけど。
フィリピンの若者は少し変わりつつある
と、ひたすらフィリピンタイムやフィリピン人のマイペースさを批判するような書き方をしてきたけど、すべてのフィリピン人がこのフィリピンタイムに悩まされているわけではないのも事実。
というより、フィリピンタイムの慣習は排除される動きが強くなっています。
時間に遅れてくることはビジネスにおいて、仕事の効率化を下げ、生産性を著しく下げる要因になります。
政府もこのフィリピンタイムをユニークな文化として無視することはできなかったらしく、国民の時間感覚の改善のために様々な施策を取ることに。
代表的なものが、2013年に制定された、フィリピン国内のテレビやラジオ・公共の場の時計を標準時間に統一化させる法律。
驚くべきことに、それ以前はテレビやラジオに表示される時間も局によって異なっていたのだとか。この法の制定は、フィリピン国民に時間を守ることの意識を植え付けるためのものと言われています。
国としてフィリピンタイムの改革に努めているせいか、若者を中心に時間を守ることが当たり前になりつつある様子。
筆者はフィリピン国内で2年ほどボランティアをしており、現地の学校に訪問する機会がありましたが、多くの学生は
「時間を守ることは当たり前。相手に迷惑をかけてしまう。」
と言っており、時間を守る意識が一般的になってきていることが当たり前になりつつあるようですね。
まとめ
というわけで、フィリピンタイムについてまとめました。
かなり批判チックなニュアンスですが、慣れてしまえばこれほど過ごしやすい国はないと思います。時間に縛られない生き方はストレスもほとんど感じないですしね。
また、時間にルーズな国はフィリピンに限った話ではありません。イタリアやカナダも同様に、「Italian time」や「Canadian time」といった皮肉めいたフレーズがあるみたいですね。
とはいえ、フィリピンタイムに染まりすぎると日本に戻ってきた時に詰むので、ほどほどに合わせましょう。